地方銀行の「一支店」から始まった哲学の「一視点」の話。その2。

昨日、彼から電話を貰った時

彼がかけていた銀行内に

家内もいた。

 

ここからは家内側。

 

窓口で用を足していると

突如聞こえて来た大きな声。

その場のみんなが振り返る先に

ピンク電話で話す一人の男。

 

周りを気にする訳でもなく

大きな声で

 

「あ〜どうも〇〇です」

「ええ ええ 元気です」

 

皆さん

 

「なんじゃこの男は?」

 

以下、話の内容まで丸聞こえ。

内容からして

大変真面目な話をしている事はわかった。

 

しかし話の途中で

いきなり電話が切れた様子。

首を傾げながら

不思議そうに受話器を置く男を

皆さんこれまた不思議そうに眺めていた。

 

なんとなれば

彼の左手には

ケータイが開いて握られていたから。

 

途中で話が途切れたのも

不思議だった様子。

 

そしてしばらく後

出口に向かい

大声が聞こえて来た。

「あ〜どうもどうも!」

 

日本人でも

「人の目を全然気にしない人もいるのね」

 

観光地とゴールデンルートでは

良く見かける光景ではあるが。

 

と家内。

と周りの人たちも思っていたであろう。

 

しかしケータイ持っているのに

なぜピンク電話?

 

用を済ませ

私が待つ車に向かい

サングラスをかけ日傘を広げる。

歩を進めると

あろうことか

先ほどのピンク電話の主がいるではないか。

それも私と話している。

自然と足が止まった。

 

ここから私側。

 

なぜ家内が

すぐに近づかなった理由がわかった。

そして車に乗り込む

他の利用者さん達の視線を浴びる理由も。

一時的に彼は銀行内で有名人だった訳ね。

 

聞けば片手にケータイとか。

あ〜

多分電話止められてるのね。

それで番号を携帯で確かめながら

私にピンク電話。

それも入れた小銭でかけた電話が

タイムアウト。

 

つなぎ合わせると合点が行く。

 

「これほど真面目で勉強熱心な方が」

 

世の中は上手く行かないものではある。

しかし、当人は以前と変わらず

飄々としている。

 

同乗して事務所で話をする。

昨日書いた内容はさておいて

当人の生活について話が及ぶ。

 

今までどうやって生活して来たのか

不思議で仕方がない。

ストレートに聞いてみれば

知り合い友人のつてを頼り

語学の家庭教師等で

糊口をしのいで来たとか。

それも限界に近く

今の知識を持って

大学の非常勤を探そうかとの事。

 

気持ちはわかる。

が、しかし

この人口60〜70万の地方

それもかなりの辺境の地で

彼がやりたい講義に

どれ程の需要があるのか?

第一、哲学系の学科が

この地に存在するのか?

 

もしあるとすれば国立の一校。

しかしそこに

 

「入れてください」

「はいどうぞ」

 

とは行かぬであろう。

それは断言できる。

 

と、言うか

その調子だから

今まで困窮していたのではないか。

 

私以上に現実に疎い。

 

しかしその生活の中でも

削れるものは削り

自身で紡ぎ出す思考を

セッセと机に向かいしたためて行く。

そんな姿を想像し

「この人は大化けするかも」

と頭を過ぎったのである。

 

が、それも一瞬。

 

昨日書いた内容から

この人は多分、学会からは

「認められないだろうなぁ。。」

 

あれだけの学力がありながら

学問の方向を私が思うに間違える。

そして

あれだけの学力を他の分野に活かすなら

大成したかも知れない。

 

世の中、歯車一つ間違えると

後々大違いになってしまう事は

良くわかった。

 

彼の出た大学は本郷にある。

その大学の門を叩こうと決意した時

大いに勉強したであろう。

おまけに当然の如く院にも行っている。

そしてその大学を出れば

「バラ色の人生が約束されている。」

と思っていたであろう。

 

誠に世の中は

ままならぬものであるものよ。

と我が身も振り返りつつ

見上げる窓一面に広がる青空が

やけに眩しい昼下がりであった。

 

家内曰く

「本当に熊本って狭いわよねッ!」

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