中学 その3

千駄ヶ谷の塾では始業時と終業時に
スタンプをカードの日付けの入った個所に押してもらう。

始業時は三々五々とは言わないが割とスムーズであるが
終業時は一斉だから受付はメッチャ混み合う。

ある日終業のスタンプ貰う為人混みの中にいた。

貰って帰ろうと振り向いたら、
ちょい後の人混みの中に頭一つ抜けた背の高い美人。

その美人と目が合ってお互いビックリ。

「浩也!」

「先輩?」

学校の先輩でありました。

なぜか先輩は「シマッタ!」の顔をしています。

その時は友達とまたまたアキバに行く事になってましたので
言葉も交わさず人混みを抜けるのが精一杯。

明けて月曜日。

私の学校での役割の一つは放送部でありました。

中学校の月曜日の朝は昔から全校朝礼。
マイクの用意やらコードさばきやら
PAやらやらねばなりません。

朝礼終わってコード始末していたら、
くだんの先輩がツカツカと寄って来ました。

やおら私の腕を掴むなり

「浩也 ちょっと来なさい!」

校舎の裏手にある保健室のあたりに連れて行かれました。

で、超怖い顔で

「あんた、私があの塾に行ってる事、誰にも言ったらダメだからね。わかった!」

もう

「はい」

と応えるしかない形相でした。

解放され戻ると周りの男子が
教室に戻りもせず興味深々で大量に待ってました。

学校でも評判の美人でスラリの成績優秀な人でしたので、
その彼女が大胆な行動に出た事の結末を
皆聞きたがるのは当然です。

中には失望の色を隠さない先輩男子も多数。

「きっと愛の告白?」

が渦巻いていました。

「なになに?」

の嵐の中、しかし訳を言う事はできません。

しばらくは嬉しい誤解を密かに楽しんでいたのであります。

しかしもう一人の仲良し女性先輩から
先の先輩の真実の姿を教えてもらったのであります。

それは、またね。

自身でしか割れない積み重ねの日々はかけがえのないもの。話は多岐に渡ります。