古河庭園から 徒然です。

ふと思い出し徒然。

暫しおつきあいを。

忘れ得ぬ名前があります。

清顕、聡子。

 

この名を見てピンと来た貴方。

貴方は素晴らしい!

 

そう

「春の海」の主人公。

かの三島由紀夫さんの

「豊饒の海」の一巻です。

 

三島さんと言えば

我が国を代表する作家にして思想家。

 

さらに

皇国主義者。

 

で、ありながら

ノーベル文学賞に最も近いと言われる程、

海外でも評価の高かった作家。

 

この場合

「伝説の」

との単語を使っても何処からも

異論は来ないと思いますが

まず

全共闘と東大での「伝説」の討論会を

まず思い浮かべねばならない。

 

「解放区」と名を穿たれた

一部無政府状態の場でその彼が

千人単位の相手に一人で論線を張られた

有名なエピソードであります。

 

その蛮勇とも言うべき度量に

感嘆するしかないのです。

いくら東大と言えども

当時の学生は感染した熱病が

高熱を発している真っ只中。

 

そこに独り乗り込み大向こう相手に

「臆する」

辞書にその単語すら

無きが如きでありました。

 

お知りになりたい方は

書き起こして出版されていますから

是非ご一読を。

 

読んだら多分

 

「話になってねぇじゃんw」。

 

で、

ややこしい解説は抜きに

彼の根底にあったのは

徹底した「美」意識。

 

それに尽きます。

彼の書を一冊でも読めば

お判りいただけると存じますが

旧仮名遣いによる

唯美的な文体に一度でも触れたなら、

虜になることは請け合います。

 

言っちゃ悪いけど

現在の物書きさんたちが

束になっても敵わない。

 

全体の構成、文体、

修飾語一つも決して無駄がなく

ピタリと文脈にジグソーの様にはまり、

そして見事な終焉が約束される。

 

行動する人でもありました。

楯の会。

彼が創った会ですが

法上認められない民兵組織です。

 

大真面目に三宅坂でお披露目閲兵。

制服は目の詰まったフラノの詰襟。

金ボタンがダブルで

丸で「サイボーグ009」。

 

結末は皆さんご存知の通りですが

それから後年。

私は上京して学生となりました。

借りたアパートが安さを求めて

北区の上中里。

 

駅から長い坂がございました。

坂から程近い在所でありましたが

その近所に「古河庭園」なる

財閥の別邸があったのです。

 

石造りの立派な建物と広い庭。

池もありまして

グルリ散策して、

ある事に気がつきました。

 

当時は、既に枯れていて

往来の姿を

その景観から想像することは

出来なかったのでありますが、

かの冒頭の一冊。

春の雪を読んだ事がある人には

すぐに往時の姿が目に浮かぶ。

流れ落ちる滝は此処だ。

と。

 

あの本に書かれていた清顕の家の庭、

あれはこの庭が元である。

 

ひとりほくそ笑みました。

 

其れ程似ていたのです。

実際には取材された場所が

別にあるのですが

それは私にはどうでも良いのです。

私にとっての松枝家の庭。

 

そう感じた時から

この作家は

常に私の側にいるのでありますよ。

 

些細で妙なところから人は親近感を

持つのであります。

 

有り体に申せば、当時の金持ちは

お屋敷にかける造作は

似た様な事していたんでしょうけどね。

 

申し添えますが、

思想信条、これは別の話しとなります。

はい。

 

アイキャッチは都の公園協会さんのものです。

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